ため池の放射性セシウム
報告:伊井一夫+事務局
ため池除染
ため池の底の放射性セシウム濃度が高く、ため池の水を用いて栽培する作物のセシウム濃度が高くなるのではないかという懸念がもたれています。
これに対応して、自治体によるため池の除染を資金・技術で支援するという方針が政府から出されています。
中・浜通り1000カ所程度 農業用ダム・ため池除染 福島民報 2014/03/22
「ため池」除染に“4手法” 秋にも実施、人的な負担増課題 福島民友 2014/05/11
ため池の調査
現に居住している住民、避難中で今後の帰還を考えている住民にとって水(飲用水、農業用水)への不安は強いものがあります。
その一方で、ため池の水から検出されるセシウムのほとんどが「懸濁態」つまりセシウムが強力に固定された粘土粒子が水の中を浮遊している状態であって、作物への移行は限定的と考えられるという調査結果があります。
除染後の再流入もありうるので、ため池除染の効果は限定的ではないかという意見もあります。
福島県内におけるため池中の放射性物質 に関する実態と対策について ~中間とりまとめ概要~ 平成25年4月 農林水産省農村振興局
ため池等の放射性物質に関する実態と対策について ~2013年度ため池等汚染拡散防止対策実証事業の調査結果概要~ 2014年7月 農林水産省農村振興局 福島県農林水産部
玉野のため池の土壌を測定
ふくしま再生の会は、ため池の底の土壌の状況を知る第一歩として、ため池の干上がった底の土壌の放射性セシウム濃度分布を測定しました。
会員ボランティアの小原さんが、2014年5月12日に玉野のため池6地点で採取した土壌を、東京大学農学部「サークルまでい」で2㎝毎に切り分けてバイアル詰めし、同放射性同位元素研究施設のNaIシンチレーションカウンターで5月28日に測定(廣瀬農助教のご協力による)しました。
各地点の0-14㎝の深度分布(乾燥重量当たり)は以下の図の通りです。
[1][2]は水が干上がった後の、湿り気を含んだ土壌で、水の底の状態をよく保存していると考えられます。それ以外の地点は、水が干上がってから長い時間を経過していると思われる場所です。
考察・所感(伊井一夫)
1.ため池の下流側([1]、[2])の方が、上流側([5]、[6])よりも放射性セシウムの濃度が高く、また、表面0-2cmに集積している。
この結果から外挿して考えると水の残っているところでは、放射性セシウムは底表面のみに集積し、その濃度は10万Bq/kg乾燥重量を超えると推定されます。
2.ため池の底の除染をするのであれば、水を抜き、表面0-2cmの剥ぎ取りで、90%以上の除去が可能と思われますが、水抜きの際に水とともに表面の汚染土が流れ出る可能性も高く、また山の汚染落ち葉や土壌の流入により、再汚染が起こると考えられます。
山の除染も含めて、広く考えて対処する必要があると思います。