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ふくしま再生の会

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若者の力、シニアの経験を世界の被災地「ふくしま」へ

ふくしま再生の会

<活動報告>

2011年8月

8月6日~8月8日

3日間にわたり、総勢20名以上が作業に参加。北は帯広、南は京都、さらに神奈川県湘南、つくば、国分寺、そして都内駒 込からレンタカー組と、全国各地から集合してきた人々である。いろいろな専門家や職業の人が、自分がやれそうなチームに即席で入って、多種作業を行った。
作業内容は以下のとおり。

  1. 牧場のソルガム播種班
  2. 家屋と周辺の除染と計測班
  3. 除草の堆肥化班
  4. 村内放射線測定班
  5. 光回線設置などの通信環境整備
  6. 水系のセシウム濾過実験班
  7. 畜産の再生に対する提案を討議
  8. 森林の再生へ向けて杉林の調査とサンプル採取
採草地の除草(クリックで拡大)
ソルガムの播種(クリックで拡大)
  1. 牧場のソルガム播種班
    ファイトレメディエーション(植物による除染)を実施するため、作業所周辺の畑約1000m2、牧草地約1000m2を対象として、汚染度を計測し、セシウムを吸収すると言われるソルガムを播種。
    具体的には、以下の作業を実施した。
    • 区画割り
      5m×5mの区画を、畑・牧野各20~30区画割り付けた。
    • 畑・牧野の放射線量計測
      土の表面、1m高さの放射線量を計測した。
    • 土中の放射能測定
      検土杖という器具を用いて、各区画の中央において地表0~5cm、15~20cmの土を採取。セシウムの濃度を計測中。
    • ソルガムの播種
      セシウムの吸収力が強いと言われるソルガム「つちたろう」を播種した。
      2011年8月14日時点で、20cm程度に生育。
  2. 家屋の除染(クリックで拡大)
  3. 家屋と周辺の除染と計測班
    家屋と周辺環境の除染テスト。
    高圧洗浄機を使って、屋根・壁・庭舗装部分の洗浄を実施。
    洗浄前後の線量は、雨どいなど高濃度の部分では大きく下がったが、全般的には期待したほどの低下は見られなかった。
    その後、各種洗剤の有効性について実験を続けている。

  4. 除草の堆肥化班
    牧草地や田畑に生えている雑草にはセシウムが吸収されている可能性がある。また、今後ファイトレメディエーションにおいて刈り取られた植物も同様。これらを処理するためには体積を減らすことが必要となる。堆肥を作成する要領で雑草の体積を減らす実験を行う。

  5. 村内放射線測定班
    リアルタイムの放射線量計測器を設置し、遠隔地(つくば研究室)で常時放射線量を計測・分析する仕組みが構築された。また、この計測器を車載して、村内の放射線量を連続的に測定し、つくばの研究所で分析中。
    結果の分析から、汚染マップを作成する。

  6. 光回線設置などの通信環境整備
    実験の拠点となっているお宅周辺には携帯の電波は届かないが、地震前の段階で飯舘村全域に光回線を敷設する構想が実施されていたため、光回線によるインターネット接続が可能。実際に回線工事を行う前の現地確認を行った。

  7. 水系のセシウム濾過実験班
    小川にゼオライトや活性炭 入りの土嚢を入れ、前後のセシウム量を測ろうという実験。
    この実験には、飯舘村の人たちは、主に山の民であり、森林を大切にしているという背景がある。山林に積もってしまったセシウムが、どのように下流域あるいは海へ流れるか、自分のこととして心配しているのである。
    「ほっとけばセシウムは雨で海の方に流されて、自然にきれいになるよ」などという都会人が物知り顔でいう浅薄な言説とは全く違うのである。自然の中で循環型の生産と生活を行ってきた生産農家は消費者への責任をよく考えている。さらに、相馬地方の水源地としての責任もよく考えているという事実を、都会の生活者は、マスコミに登場する訳知り顔の「専門家」や「評論家」の浅薄な言説にまどわされないようにしたいものである。

  8. 畜産の再生に対する提案を討議
    自然の中の生産システムで重要な畜産をどうやって再生していくかという課題である。繁殖と育牛・肥育牛の仕組みを放射線との葛藤のなかで、どう再構築できるのか、まだ見えていない。除染のプロセスと畜産再生のプロセスがいつどこで重なり合うのか、アイデアは多く出され始めているが、まだ、具体的な道はみえていない。

  9. 切り出された木材(クリックで拡大)
    樹皮をはぐ(クリックで拡大)
  10. 森林の再生へ向けて杉林の調査とサンプル採取
    森林再生は、飯舘村再生の鍵を握っていると考えられるが、政府等にその動きはまったくない。関係者にその認識がなく、単に知らないのかもしれない。森林の多くを依拠している日本列島で、林学系の専門家や専門領域の弱体化は明確である。
    6月25日~26日の調査で広葉樹林の落葉に、放射能が多く付着していることを報告した。膨大な落葉のかきだしが急務だが、その作業量を考えると対策の具体化は私たちの手に余るかもしれないという事実を報告した。
    今回は、5月から7月に かけて伐採された針葉樹林帯に入り、杉林の幹の皮や葉、輪切りの木片を採取して、放射能の分布を調べることにした。私の直感では、植林された杉の木などは、その樹皮にセシウムが付着しているのであり、数ミリをはぎとり処理すれば、健全な木材が得られるのではないか、と仮説を立てている。これが実証できれ ば、林業の一部再生は可能性が増すと考えられる。

2011.8.15「8月後半の再生作業ご案内」と田尾ブログ「愚者の声」を元に構成)


8月20日~21日

惑星(木星)観測所(クリックで拡大)
福島第一原発方向(クリックで拡大)

今回は、3人だけの飯舘村行きであったが、村内放射線マップづくりに大きな前進を得た。車に移動型放射線モニターを積み、村内地図をにらみながら、きめ細かく走ることにした。
特に、村民もあまり踏み込まない荒れた村道へ入ってみた。道は背の高い草に覆われつつあり、ところどころ、道の真ん中を20~30㎝以上の泥や水流による割れ目が曲がりくねっている。Uターンもできない、昼も暗い樹林帯を登り下りして奥へ進む。放射線量はじょじょに上がっていく。6~9μSv/hあたりである。一つの村道が峠に差し掛かった時、目前に映画「未知との遭遇」のような光景があらわれた。
車を降りて塀を乗り越えて丘を越えると、飯舘村全村を見渡せて、はるか福島第一原発まで見渡せそうな(数本の巨大な送電線が遠くに見えている)頂上に出た。それは、東北大学理学系研究科が設置した惑星(木星)観測所であった。3階建の屋上にドームの天体観測所があり、その隣に高さ40~50mの巨大な、双曲 線面を2つもった一種なパラボラアンテナが建っていた。この巨大なアンテナは東北大学からのリモートコントロールで角度を変化しながら稼働する。
全村避難し、静まり返った森は、木も草も自然に帰る勢いを増している。史上最悪の事故を起こした原発事故現場を遥かに見渡す山頂に、木星からのシンチレーション放射線を観測している巨大な科学施設が存在している。この現実は、決してスピルバーグの映画ではないのだと、自分に言い聞かせながら、暗い悪路から脱出するべく、下り道を慎重に運転した。

(田尾ブログ「愚者の声」を元に構成)

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