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若者の力、シニアの経験を世界の被災地「ふくしま」へ
●ガンマカメラのデモ
線量計を使って、ある地点の正確な線量値が測れたとしても、その値をどう解釈すればよいのかというのは案外難しいことです。測定されたポイントの放射線は、どこから飛んできているのか。セシウムの多くは地面にあると考えられますが、足元の地面から多く飛んでいるのか、離れたところから飛んできているのかわかりません。
地面以外にも、木の上からとか建物からとか、いろいろなところにセシウムがあって、それらから飛んでくるガンマ線の合算値が線量計に現れている値です。したがって、その地点の線量を下げようとすれば、どこからたくさんのガンマ線が飛んできているのかを知る必要があります。
除染の際に事前に汚染されている箇所を確認したり、除染作業後に「とりこぼし」がないかを確認したりするために開発されたのがガンマカメラです。
「ガンマカメラ」というのは、その名の通りガンマ線を捉えるカメラです。どの方向からガンマ線が飛んできているかということを写真のように表示します。通常の光学カメラの画像にガンマカメラの画像を重ね合わせることにより、さらに直感的に「どこが汚れているのか」を知ることができます。
現在、複数のメーカーからガンマカメラが発売されていますが、今回は菊池製作所にお願いして、日立製のガンマカメラのデモを見せていただきました。このガンマカメラは、鉛の遮蔽体に穴をあけてそこを通ってくるガンマ線の像を縦横16×16に分割されたセンサーで測定するという方式です。つまり「ピンホールカメラ」ですね。鉛の遮蔽体なので非常に重く、30cm×40cm×40cmほどの大きさで約40kgあります。
今回は限られたデモ時間の中で、佐須の実験田、菅野宗夫さんの住宅、阿部勝男さん宅の前の山林、菅野啓一さん宅のいぐねを測定しました。
画面上に赤く表示されている箇所は、その方向からガンマ線が多くカウントされたことを表しているのですが、あらためてガンマカメラの測定結果を見てみると、予想通りのところと、「こんなところが」と思うところがありました。
標準的な測定時間は20分です。これが測定時間として妥当なのか、また、見た目どおり赤い箇所の汚染が強いと解釈してよいのかというと、検討しなければならない点もありそうです。引き続き評価の機会を探りたいと思います。
八下田さんのレポートも合わせてお読みください。
●除染土処理実験
2012-2013冬シーズンの除染実験の計画は、除染土の安全なローカル処理方法の開発とイノシシ田の除染方法の試験です。
農地の除染土処理について、ふくしま再生の会では、セシウムが粘土粒子に固定しているという性質を利用し、農地の一部に穴をほり土中に埋めるという方法が現実的で、かつ十分に安全な方法ではないかと考えてきました。
セシウム汚染土を土中に埋めるとセシウムが地下水に浸み出してしまうのではないか、という不安が強いと思います。
しかし各種の実験や調査によれば、セシウムは粘土に強力に固定されてはなれないということがわかっています。また、予備的な実験で、佐須の土壌においてもセシウム濃度の濃い土壌から土中にセシウムが染み出していかないと思われることが確認されています。
さらに安全性の確認を行うために、表面のセシウムの濃い土壌を穴に埋め、そのまわりの土中に放射線モニターを配置して継続的に測定する実験を行うことにしました。
表面の汚染土壌を埋めるというのは、農地の除染で行われる方法のひとつである「天地返し」と同じ方法だと言えます。今回行う実験は、天地返しをもっとていねいに行うものです。
まず農地の表面5cmほどのセシウム濃度の高い土壌を剥ぎ取ります。除染土壌を埋めるための溝を掘ります。このとき、表面を剥ぎ取ったあとに掘り出したきれいな土を脇に寄せておきます。
堀った溝に農地のさきほど剥ぎ取った除染土壌を入れ、人力で突き固めます。最後に、脇に寄せておいたきれいな土を上にかぶせます。
実験を指揮する溝口教授は「までい工法」と命名しましたが、中高年に親しみのある呼び方でいうと美輪明宏さんの「ヨイトマケ」ですね。
「覆土による放射線量低減法-汚染土壌を地中に埋める」溝口 勝(PDF 640KB)
●イノシシ田の測定
2012-2013冬シーズンのもう一つのテーマである「イノシシ田」の除染ですが、イノシシによってぼこぼこにされてしまった農地は、村内のあちこちで見ることができます。こうした農地では、もはや表面5cmを剥ぎ取るという除染方法は通用しないと思われます。
宗夫さんが撮影したイノシシ
それではどのような方法があるのか、それを知るために、まずはイノシシ田の放射能分布を調べました。凸の部分と凹の部分でセシウムはどのように分布しているのか、そこに法則性があるのかを調べます。
方法は、まず鉛遮蔽体によって周辺からの放射線を遮り、地面からの放射線を測ります。
そして土の表面を2cmほど剥がして同じように地面からの放射線を測り、というように繰り返して測定することによって、深さ方向の分布の概要を調べました。
その結果、イノシシにより荒らされ凸凹を生じた田では、凹部の表面0~4cmの土壌が積み上げられて凸部が形成されたと推定される放射線量分布が観測されましたが、極端に荒らされた田や、荒らされた後に雨などの水流入が起こった田での放射線量の分布は異なっていました。
●大掃除
ふくしま再生の会の飯舘村村内の拠点は、菅野宗夫さんの留守宅(避難中のため)です。毎週末に利用させていただいていますが、実験資材などもたくさん運び込まれてかなり雑然としてしまっています。
場所を提供していただいていることに感謝しながら、大掃除をして気持ちよく新年を迎えようという呼びかけに応じてたくさんの会員の方に集まっていただきました。
おかげで、住居だけでなく、納屋や裏山などきれいにして、資材の整頓もできました。
試験田では「までい工法」の続きも行われました。
までい工法の現場
●比曽農地除染実験
イノシシ田の除染方法として、農水省のガイドラインには「転圧」してから表面を剥ぎ取ると書かれています。転圧というのはデコボコの土を押しつぶすという意味ですが、そのためには重機が必要です。まして広い農地ですので、小さな重機でこまごまとやっているわけにいかず、重量のある大型重機が必要となります。
そこで、この冬シーズンには大型ショベルカーを借りて転圧と剥ぎ取りの実験作業を行うことにしました。この週は、比曽の牧草地で剥ぎ取り除染の実証試験を行いました。
重機オペレータは、そのプロである啓一さん。表面5cmをきれいに剥ぎ取り、一度剥ぎ取った場所には入らないように後退しながら剥ぎ取っていきます。こうしないと剥ぎ取った場所が再び汚染されてしまうためです。
剥ぎ取った土壌はフレコンバッグに詰めます。これは国の事業でゼネコンがやっているのと同じ方法で、除染土壌を詰めたフレコンバッグが並んでいる風景は村内のあちこちで見ることができます。
やってみてわかったことは、フレコンバッグを開いてここに土壌を詰め込むという作業がやっかいで、この作業を効率的に行えるための道具が必要だということと、頭でわかってはいたことですが、土壌の量の多さでした。
ラジコンヘリによる除染現場の空撮