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若者の力、シニアの経験を世界の被災地「ふくしま」へ

ふくしま再生の会

<活動報告>

2012年1月

1月7日-8日

凍結の厚さは5cm(クリックで拡大)
凍土は固い(クリックで拡大)
重機による剥ぎ取り(クリックで拡大)
除染後の地表線量測定(クリックで拡大)
土壌分析のサンプル(クリックで拡大)

2011年最初の現地活動は、1月7日~8日に行われました。
2011年12月4日の活動報告で、霜柱による汚染土壌層剥離の実験についてレポートしましたが、今回の活動でその効果が確認できましたので、まず「速報」という形でご報告します。
飯舘村は年明けから本格的に冷え込み、実験農地の土壌の表面は「霜柱」というよりは固い「凍土」状態となっています。この凍土の厚みは地中に埋められた試験管内の氷の厚さで計測でき、5cm程度であることが確認できました。
地表から5cm程度の深さの土壌は、ちょうどセシウムの大半が定着していると考えられる層と一致しており、この凍土を剥がせば高い除染効果が得られるのではないかと期待されます。
また、凍結層のすぐ下の土壌層の水分は凍結によって上に吸い上げられるため、凍結層の直下には比較的乾燥した土壌層ができます。このため、凍土の層が剥がれやすくなっています。
実際、スコップなどで凍土を剥がしてみたところ、5cm程度の厚さできれいに剥ぎ取ることができました。さらに、凍土はかなり固く、大きなブロックとして剥がすことが可能で、剥ぎ取りの作業効率はかなり高いと思われます。

剥ぎ取り前と剥ぎ取り後の地表面の線量を計測して比較した結果は以下のとおりで、およそ10分の1程度まで低下することが確認できました。これは各種の固化剤を使った剥ぎ取り実験の結果と一致するものです。

  • 除染前(地上100cm):2.53
  • 除染前(地表):1.30, 1.04, 1.11
  • シャベルによる除染後(地表):0.55、0.30, 0.20
  • 重機による除染後(地表):0.13, 0.18, 0.11

(単位はμSv/h。Aloka TCS-171で測定。地表では鉛コリメータを使用)
(計測器の校正値0.9で値を修正しました。2011.01.10)


土壌を分析した結果(暫定)、凍土:23,760Bq/kg、凍土剥ぎ取り後の土壌:2,670Bq/kgでした。
これは暫定の速報値です。凍土は多くの水分を含んでおり、除染後の土壌は乾燥しているため、乾燥後に計測して正確な値を出せば、剥ぎ取りの効果は90%以上になると考えられます。

凍土の剥ぎ取りは飯舘村の自然環境を利用したもので固化剤を必要としませんので、前段階の作業は不要、作業員の被曝量、コスト、さらに汚染土壌の後処理の面でも有利ではないかと考えられます。
ただし、この方法は冬季限定ですので、活用できる期間は限られています。この方法が今冬の除染活動に活用されることを期待しています。
ふくしま再生の会では、実験農地をさらに広げて凍土の剥ぎ取り実験を行う予定です。
また、剥ぎ取った汚染土壌の処理(仮処理)についても、十分な遮蔽、放射能漏れ対策と継続的な監視方法の実験を計画しています。

農地の凍土剥ぎ取りに関心をお持ちの方は、当会までご連絡ください。

凍土剥ぎ取りによる除染法の考案者である東大の溝口教授による緊急レポートもありますので、参考にしてください。

「速報 冬の間に凍土を剥ぎ取れ! 自然凍土剥ぎ取り法による土壌除染」 溝口勝

「修正 Stephan 式による凍結深の推定」 溝口勝

1月14日-15日

凍土を剥ぎ取ったところ(クリックで拡大)
厚さは約5cm(クリックで拡大)
除染土を特殊シートで包む(クリックで拡大)
この上に土を被せる(クリックで拡大)

今回は2つの実証実験を行いました。
「凍土の埋設実験」と「山林の落葉運搬試験」です。

●凍土の埋設実験

前週に引き続き凍土剥ぎ取りを行いましたが、今回は剥ぎ取りの範囲を広げ、かつ剥ぎ取りの結果発生した除染土を穴を掘って埋める仮処理を行う実験を行いました。
凍土剥ぎ取りによる除染方法を考案した溝口教授が提案する処理方法は「剥ぎ取る面積の5%の面積の穴を掘り、そこに除染土を埋めて上から除染されていない土壌で覆う」という方法です。これを実際にやってみました。
5cmの厚さで凍土を剥ぎ取り、5%の面積でこれを埋める場合、穴の深さは1m+覆土の厚みとなります。

除染を行う上で、現在の最大の問題は除染によって発生する除染廃棄物(農地の場合は、除染土)をどうするかということです。全体としてみると、その量は膨大で、仮置き場や中間処理施設の案が検討されていますが、その実現には時間がかかると予想されます。

そこで今回はそれらが実現するのを待つのではなく、除染する敷地内の「5%の面積」を使って除染土の「仮仮処理」を行い、少しでも早く環境を改善できないかという実験を行うことにしました。

「仮仮」とはいえ、放射性物質の地下水などへの染み出し対策を十分に行い、その対策の効果を確認する実験を兼ねます。
今回は二本松市などにおける除染にも実績のある「ボルクレイ・マット」というシートを使って除染土を包み、その上から覆土を被せるという処理を行いました。ボルクレイ・マットは2枚の布の間にベントナイトを挟んだ構造になっていて遮水効果があります。

覆土の厚さを50cmにすると、理論的には線量が1/100(面線源の場合で)になります。これで地上への線量の影響は十分小さくできると考えられます。

このような対策をしたうえで、地上の線量や染み出し対策に問題がないか、念のため放射線モニターによって継続的に監視していきます。

この方法で、今冬の間に、さらに凍土剥ぎ取りを行う予定です。

今回の土壌分析結果は以下の通りです。


【水田1】
  • 凍土まぜ(1~5cm程度) 5403, 6160, 8842 平均 6800
  • 表土まぜ(1~2cm程度) 18444, 19226, 16888 平均 18200
  • 除染後(はぎ取り後 1~2cm程度) 7455, 1424, 6367, 4017, 3444 平均 4500
【水田2】
  • 凍土まぜ(1~5cm程度) 12587, 7042, 9894 平均 9800
  • 表土まぜ(1~2cm程度) 16250, 20436, 23039 平均 19900
  • 除染後(はぎ取り後 1~2cm程度) 4841, 4907, 5821 平均 5200

(単位はBq/kg。「まぜ」は同じ条件の土壌をなるべくたくさんとって混ぜてから容器に入れたもの)

前回に比較して、全体的に除染効果が低い結果となりました。原因を調べるためには追試験が必要ですが、「1週間でさらに凍結深が進んだ」「暖かい時間帯に作業をしたために凍土の一部が解けて未凍土の地表面に残った」などが考えられます。

●山林の落葉運搬試験

木の間にロープをはる(クリックで拡大)
即席のゴンドラ(クリックで拡大)

ふたつめは、山林でかき出した落ち葉や小枝などを効率的に外に運び出すという実験です。
この実験は、兵庫県の株式会社JTトライアングルとふくしま再生の会が協力して実施しました。

JTトライアングル社は、山林の木の間にロープを巡らせ、そのロープを重機を使ってぐるぐると回転させることによって、ゴンドラのように荷物を運ぶという技術を有しており、これを山林の除染に生かせないかというJTトライアングル社の提案を受けて協力して実験を行うことになりました。

JTトライアングル社は今回の実験に合わせて兵庫から重機などの機材一式を持ち込み、実験場の山林にロープを張り巡らしました。ふくしま再生の会のメンバーや取材で訪れた報道関係者なども協力して山林の落ち葉などをかき出す作業を行い、それを実際にロープで運び出すことができるということを確認しました。
1月中に、再度運び出しの実験を行う予定です。

落ち葉かき出し後に表土を3cmほどはくりした場所で採取した土の分析結果は以下の通りです。

  • 山林 落ち葉かき出し+表土はくり後 ~5600(Bq/kg)

山林の除染実験レポート(2012年1月15日)

1月21日-22日

●凍土の剥ぎ取り実験

凍土の厚さは約10cm(クリックで拡大)

凍土剥ぎ取りによる除染を効果的に行うための実験を行いました。
1月の上旬に凍土の剥ぎ取り実験を行ったときには、佐須地区の凍土の厚さはだいたい5cm程度でした。このとき、手作業で剥ぎ取りを行った結果、土壌の放射能は10分の1以下にまで下げることができました。
しかし1月下旬の現在、凍土の厚さは10cm程度にまで厚くなっています。厚さ10cmの凍土を剥ぎ取ってしまうと、上質な土壌の多くがはぎ取られてしまうため、たとえ土壌の放射能を低下させることができても、農地としての力は大きく損なわれてしまいます。
放射能がどれぐらいの厚さに止まっているのかを知り、セシウムの大半がとどまっている範囲で、できるだけ薄い凍土ができたときに剥ぎ取ることが求められます。
しかし、凍土の厚さは気温や土壌の質など各種の条件によって異なります。また、セシウムがどの程度の深さに止まっているのかは、土壌の質やセシウムの濃度によっても異なるかもしれません。

つまり、的確な表土剥ぎ取りを行うためには、農地ごとに「セシウムが土中でどれぐらいの深さに分布しているか」「気温や土中温度と凍土の厚さの関係」ということを知る必要があります。
セシウムの深さ分布を知ることによって、どれぐらいの厚さの凍土ができたときに剥ぎ取り除染を行うかを決めることができ、気温と凍結深度の関係を知ることによって、凍土の厚さを予測することができます。

村内各地の土壌サンプルを採取し、深さごとに放射能を分析するという調査を行っていきます。

凍土剥ぎ取り分析結果:比曽地区(暫定値)

  • 表土 70000~80000 (Bq/kg)
  • はぎ取り後 400~500 (Bq/kg)
  • はぎ取り後のさらに5cmほど下 ~80 (Bq/kg)

1月25日

落ち葉の袋と土止め(クリックで拡大)
ゴンドラによる搬出(クリックで拡大)

JTトライアングルによる山林除染実験を行いました。

JTトライアングルは、1月14日・15日に社長以下総勢7名が大型ショベルカーをトラックに積んで飯舘村に来訪。山林での搬出実験を行いました。
そして今回は、村、環境省、林野庁などからの見学者が見守る中で、山林から落ち葉などを運び出す作業をもう一度実演しました。
前回、再生の会メンバーが20m四方で5cmの落ち葉をかき出した場所を、さらにJTトライアングルの方が草刈り機の改良機を使って5cmかき出した後測定。線量はほぼ10分の1に低下していることを確認しました。
この際、土壌流出防止のため、竹を使って土止めを行った上に竹チップを撒き、さらに網をかけました。
搬出作業も順調に進み、見学者にも印象的だったようです。

この後、水田に移動し、見学者に凍土剥ぎ取りによる除染実験を説明しました。こちらの実験にも高い関心集まりました。

山林の除染実験レポート(2012年1月25日)

1月28日-29日

高湯温泉(クリックで拡大)
土壌サンプルの採取(クリックで拡大)
凍土を溶かす(クリックで拡大)
セメント量による強度実験(クリックで拡大)

福島県では、各地で除染作業や復興事業が始まっているためだと思われますが、宿泊場所を確保するのが難しくなってきています。そんなわけで、この日は飯舘村から車で1時間以上かかる高湯温泉に宿泊しました。高湯温泉は福島市から西へ10kmほど、磐梯吾妻スカイラインの入り口近くにあります。飯舘村とは気候が異なり、雪深いところです。われわれの車は4WDは1台もなく、雪の山道を登れるのか不安でしたが、案の定途中で先頭車がスタックし、車から降りて1台ずつ押さなければならないというアクシデントが。それでも無事に宿に到着できたのですが。

今回は以下の作業を実施しました。

●土壌サンプルの採取

村内の農地から円筒形の土壌を抜き取り、それを2cmの厚さでスライスして放射能を計測。これによって、深さ方向のセシウムの分布を調べます。このデータは農地除染のための基礎資料となります。
できるだけ多くの箇所でサンプルを採取して測定を行うのが望ましいのですが、当面、村内の20行政区から1サンプルずつ採取することを目標に進めます。

●除染土壌の素掘り穴への埋設実験

前回の凍土剥ぎ取り除染の際には、ベントナイトを挟んだ特殊シートで除染土壌を包んで埋設しました。
しかし土中のセシウムは粘土に固定されていて、粘土が移動しない限り、セシウムが水に溶けて流れるということはないのではないかと考えられます。
そこで、ベントナイトシートを使わず、除染土壌をそのまま埋設する方法、除染土壌にベントナイトとセメントを混ぜて粘土を固定化して埋設する方法を実験することにしました。
除染土壌にどの程度のベントナイトとセメントを混ぜればよいかを試験しました。

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