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若者の力、シニアの経験を世界の被災地「ふくしま」へ
●ゴールデンウィーク中盤のミッション
悪天候の予報の中、物理の専門家を中心とするグループで飯舘村を訪問しました。
今回の作業は、4月29日-30日に田車除染をした田んぼの土壌サンプルを採取すること、4台目となる据置モニターを見まもり隊の本部に設置すること、東北大学惑星観測所で現在室内に設置している据置モニターをより自然の環境に近い状態に設置しなおす準備です。これに加えて初めて参加された方に、村内と4月に警戒区域が解除された南相馬市を見ていただくことです。
●アナクールでの土壌サンプル採取
土壌サンプルの採取は、田車除染した後田んぼの水が完全に引かないとできません。
土壌が水をたくさん含んでいる状態では、アナクールをいれて土壌採取しても、土が動いてしまって地表から2センチ毎のサンプルがとれないのと、地表近くのセシウムの濃い泥水が深くまで流れ込んでしまって測定値が変わってしまうからです。
そこで田車除染を行ってから何日か過ぎ水が引いてから再度訪問してサンプルを採取することになります。
5月中には稲の実験的な作付けも予定していますので、それまでに分析を終えている必要があります。
このため、分析チームは日を置かずに何度も現地を訪問しています。今回、サンプルを採取したのは4月1日、4月15日と2度にわたって田車掻きをした田んぼ、4月29日に1度だけ田車掻きをした田んぼ、これから代掻きを予定している田んぼです。
●見まもり隊詰所への据置モニターの設置
本来の村役場の隣にある「いいたて活性化センターいちばん館」には、見まもり隊の事務局がおかれ、村内の見回りをする隊員の詰所になっています。
24時間体制で活動する隊員はここから見回りにでかけたり、休息をとったりします。かつては村内外から人が集まりセミナーや集会が行われた「いちばん館」内のホールには、大学の学生食堂のようにテーブルと椅子がならんでいます。訪問したのが午後1時頃だったためでしょう、隊員の方たちが20人~30人知り合い同士でテーブルを囲み休息をとっておられました。
室内で比較的放射線量が高いと思われる窓際の棚の上にモニターを設置しました。役場の担当者や見まわり隊の事務局の方が立ち会われ、見まもり隊員の方も数人モニターの数値を確認にみえました。
「いいたて活性化センターいちばん館」の隣は、特別養護老人ホーム「いいたてホーム」で、ここには今も約100人の高齢者が介護スタッフに支えられて生活しています。
この「いいたてホーム」のフェンスのすぐ脇に文部科学省が設置したモニターがありますが、このモニターには線量が表示されていません。文部科学省の担当部局には数値が転送されて確認できるようですが、村の人たちは見ることができません。
モニターが設置されているところに立って、持参した線量計で測ってみると、0.7μSv程度です。しかし、そこから10メートル離れた土の上で測ると2μSvを超える数値が計測されました。
●東北大学惑星観測所
東北大学惑星観測所は、村の北西の山頂(北緯37度42分 東経140度40分 標高614m)にあります。東北大学と協力してモニターを設置したことは以前にもご報告しました。測定結果は、毎日更新しWeb上で公表しています。
このモニターは、現在、光学望遠鏡が設置されている建物の中に設置していますが、なるべく遮蔽物が少ない自然環境に近い状態に置きたいと考え、戸外に市販の物置を設置し、そこにモニターを入れることにしました。この物置をどこにどのように設置し、電源や通信用のケーブルをどのように配置するかの下見を行いました。
●村内と南相馬市の視察
5月3日は土砂降りの大雨です。前日に測定・分析チームがサンプル採取やモニターの設置を済ませて帰ったので、この日は雨の中を初めて参加された方と一緒に、長泥を回り南相馬に足を延ばしました。国道399号線で峠を越えて長泥地区に入るとそこは、長泥の桜とよばれる花の名所です。この地区の方々が桜と紫陽花を植えて丹精されていたのだと、以前に菅野千恵子さんが話しておられました。雨の中、南斜面に100本以上はありそうな桜が満開になっていました。
長泥に着くと、何かがいっぱい詰め込まれた大きな黒いフレコンバックが田んぼのそこここにありました。バックの表面には数字や記号が書かれています。今年の2月に訪れたときは田んぼには枯草が茂っていましたが、今回はその枯草はなくなっています。黒いフレコンバックの中身は田の草刈りで出た枯草ではないかと推測しています。
次に4月16日に警戒区域が解除された南相馬の小高地区を目指しました。ここは福島第一原子力発電所から10キロから20キロの地域に当たります。飯舘から原町川俣線で南相馬に向かうと、石ポロ坂トンネルを過ぎたところで、これまで1μSvを超えていた線量が0.6μSvと半分に下がりました。常磐自動車道と交差するあたりでは0.3μSvです。警戒解除された小高地区のあたりでも線量はそれほどかわりません。しかし、小高地区に入って国道6号線から少し海岸よりに出てみると、田んぼの中に大震災直後のような瓦礫が残っていて、1年前とほとんど変わらない風景が広がっています。過酷事故と津波という現実の重さを改めて感じました。
●偶然の電話
南相馬から相馬に向かって国道6号線を北上していると、大石ゆい子さんから電話です。相馬に向かってドライブ中に、相馬の大石さんから電話がかかってくる偶然! さっそくお会いする約束をして相馬に向かいました。いつも元気な大石さんは仲間と5月12日に「復興のシンボル中村城」というフォーラムを開催するとのことです。同席された大石さんの仲間から相馬地方には二宮尊徳の報徳思想が根付いているというお話を伺いました。飯舘村の「までい」、相馬の「報徳」、どちらも自分ひとりの欲望に囚われないという点で通じるものがあるように思いました。
●飯舘村佐須地区エアロゾル測定について[速報]
飯舘村佐須地区の菅野宗夫氏の牛舎前において、ハイボリュームエアサンプラー(「ハイボリ」)によりエアロゾル(大気中を漂う直径数ナノメートルから数10マイクロメートルの肉眼で見えない微小粒子)のサンプルを採集してきましたが、その放射能測定値が出ましたのでご報告します。
試料 番号 | 試料採取日時 (開始-終了) | 流量(m3) | 大気中濃度(Bq/m3) | ||
---|---|---|---|---|---|
Cs-134 | Cs-137 | 合計 | |||
No.1 | 3月20日14:10-3月31日11:46 | 7847.6 | 0.000328 | 0.000484 | 0.000812 |
No.2 | 3月31日11:50-4月8日17:28 | 5926.2 | 0.00165 | 0.00233 | 0.00398 |
No.3 | 4月8日17:40-4月14日11:00 | 4122.2 | 0.000500 | 0.000697 | 0.00120 |
このデータから言えることは
ここでNo.2のデータについて呼吸による1年間の吸引量をSvに概算してみると、下のようになります。
これは、自然放射能と比べても非常に低い値で、飯舘の空気は大丈夫です。呼吸による内部被ばくは心配しなくてよいでしょう。
なお、母屋の軒下のローボリについても、フィルター全体をまとめて測定していただきましたが、Cs-134,137ともに僅かに検出されています。流量がまだはっきりしていませんが、総吸引時間が分かっているので毎分30L吸引で概算すると、
なお、この観測は1年続けて季節変化や気象の影響などを調べたいと思います。ご協力をよろしくお願いします。ハイボリの設置場所についても検討の必要がありそうですが、当面このまま牛舎の前で続けて行きたいと思います。今後続けるかどうかを含めてできるだけ早く決めたいと思います。
以上 少し遅くなりましたが速報です。
(報告掲載:2012.05.15)
●比曽、前田でも
今週は、新たに比曽地区と前田地区でも農地の除染実験を行いました。
比曽地区では、菅野啓一さんの田んぼで、菅野啓一さんと菅野義人さんのお二人とともに田車除染の改良実験を行い、前田地区では伊藤隆三さんの田んぼで伊藤さんとともに田車除染と代掻き除染の実験を行いました。
佐須でも引き続き田車除染の改良と効果測定を行ったほか、コンクリートブロックによる遮蔽壁実験を行いました。
●ユンボの名手の技にうなる
昼ごろに佐須到着後、二手に分かれて比曽と前田へ。
比曽では、すでに菅野啓一さんがユンボを使って田んぼの表土5cmを剥ぎ取る作業を終えていました。はぎ取られた田んぼの表面を見て、一同驚愕。鏡面のよう、と言えば誇大な表現になりますが、手作業でスコップを使ってもここまできれいに表土を剥ぎ取ることはできないでしょう。
しかも作業の説明を聞いたところ、ユンボを常に汚染土側に置き、一度剥ぎ取ったところには入らないように作業したとのこと。完璧です。
さっそく線量計で土の表面の線量を簡易測定したところ、除染前の土では約6μSv/h、剥ぎ取り後の土では約1μSv/hでした。周囲から飛んでくるガンマ線の影響を考えれば、土表面からの放射線はほとんどゼロではないかと思われます。田車除染では、これには勝てそうもない。
●改良田車除染法
啓一さんと義人さんは除染について非常によく研究されていて、この日は改良田車除染法を準備して待ち構えていました。
改良点の第一は、水を入れる前にトラクターで表面5cm程度を浅く耕起するという点。これは非常に理にかなった方法だということがわかりました。水を入れる前なので、地面は比較的固く、トラクターの重量でもあまり深くは食い込みません。削りたい表面5cmだけを柔らかくしてから水を入れ、田車で撹拌することによって、ほぼ正確に表面5cmだけを泥水化できます。
田車の役割はぽろぽろになった土を水とかき混ぜるだけ。土を削る必要はありませんので、作業は短時間で終わります。短時間で終わるということは、作業効率という面だけでなく、泥水の中のセシウムが深い層に浸みこむのを防ぐという点でも有利です。
第二の改良点は、ならし板を使って一気に掃き出すということです。ならし板は佐須でも使っていましたが、幅が足らず、テニスコートブラシを併用して何度も掃出し作業を行っていました。今回の比曽方式では、仕切られた田んぼの幅いっぱいのならし板(義人さんがYahoo!オークションで競り落とした)で掃き出すので、掃出しは3回程度で終了。作業時間は大幅に短縮されました。
ユンボの超絶テクといい、田車除染法の改良といい、この日は2人のプロにやられっぱなしでしたが、まだまだ改良の余地があることを知り、興奮しながら引き揚げました。
●代掻き法の見込み違い
前田では、伊藤さんの田んぼの一部を田車法で除染実験し、残りをトラクターを使った代掻き法で除染するという計画です。
こちらでは前日から水を引き入れ、まずは代掻き除染の実験から行いました。代掻き除染の理論については、以前の活動報告をご参照ください。
セシウムがくっついている粘土成分が水の中に浮いて泥水状態のうちに流し出すか、その粘土成分を沈殿させた後で表面層を剥ぎ取るかで除去しようという方法です。
ところが、どうもこの日の実験では目論見どおりいかない。
撹拌した後に粒子の大きな成分が先に沈み、その上に、粘土成分が浮いた泥水が分離するという状態になりません。全体が「あんこ」状になって土と泥水に分かれないのです。というわけでいったん撤収して様子見となりました。
●議論ふたたび
ふるさと体験スクールでの夕食時、比曽グループと前田グループそれぞれから作業を報告。再び除染方法についての議論になりました。議論は翌日の昼食時まで継続し、宗夫さん宅で伊藤さんも交えて昼食をとりながら検討。
議論の中で出た話題をまとめると以下のとおりとなります。
●もっと改良を!
昼食時の議論の中で、伊藤さんから、5cmの深さで耕起/水を入れて田車で撹拌/掃出しを行わず水流にまかせて泥水を排出/という方法が提案されました。比曽での改良の上に、5cm層の土壌の中から粘土成分だけを水で分離させ、除染と同時に減容(除染土壌の量を減らす)効果を狙うものです。さっそく佐須の田んぼで実験することにしました。
比曽でやったときと同様、5cmの深さで耕起し、水を入れてエンジン付田車で撹拌した後、水を入れたままにして泥水が澄むまで流し続けます。
宗夫さんからは「これなら夫婦2人でできる」というコメント。確かに、あまり手間がかからず夫婦2人で十分可能です。また、流れ出る泥水はほとんどが水ですので乾けば除染土壌の量はかなり減ります(以前の実験で確認済み)。この方法で90%程度のセシウム除去ができれば、非常に有望な方法だと言えます。
●比曽地区線量測定結果
再生の会の吉澤さんがつくばの研究所と協力して開発した「GPSガイガー」。手持ちサイズのガイガー線量計にGPSを装備し、位置情報と線量をメモリに自動的に記録していくという測定器です。その副産品として「ALOKAロガー」があります。これは定評のある線量計ブランド「ALOKA」のシンチレーション式測定機にGPSガイガーのGPSと自動記録機能を付加する装置。
今回の活動に先立って、比曽地区の菅野啓一さん、菅野義人さんから地区の中の線量を詳細に調べたいという要望があり、これらの線量計を貸し出して比曽地区の詳細な線量マップ作製に協力しました。
計画的避難区域となっている飯舘村では、国による避難区域の見直しが進められています。比曽地区は年間被ばく量の見積もりが20mSv~50mSvの範囲である「居住制限区域」に、というのが国の案ですが、住民としてそれをどう判断したらよいのか。仮に新しい区域割を受け入れるとしても、今後の除染計画に対してどう臨むのか。いずれも将来がかかった重要で困難な判断です。しかし、少なくとも正確な情報なしでは判断できないことも確かです。地区の詳細な線量マップは手掛かりのひとつになりうる基本情報でしょう。
実際に2人が線量計を持って地区内を歩いた結果、発見もありました。
測定前は比曽地区の中でも東側の一部だけが高いのではないかと予想をしていましたが、実際はいぐね(屋敷林)など地区内のあちこちに線量の高い箇所があるということがわかりました。
また、平坦な農地へ山林が突き出しているような場所、こうした場所は、神社や墓地であることが多いのですが、その先端部の入り口で非常に高い線量が観測されることもわかりました。山林の中に入ると線量は下がる。
以上のことは、いぐねや平坦地へ突き出した山林の表面にある木(主にスギ)が強く汚染されているということを示唆しています。
「ホットスポット」というと、よく例に出されるのは雨どいの流出口などですが、これらは空間的な広がりが限られているので少し離れれば線量は下がります。しかし、上記のような山林の表面部が汚染されている場合、放射線を発する場所が面的な広がりをもっていますので、かなり広い範囲に影響を与えます。義人さんはこれを「ホットスポット」とは違うことを明確にするために「ホットエリア」と名付けました。これは、かなり鋭い観察です。居住環境全体の線量を下げていくことを目的とすれば、庭や住居だけでなく周辺の「ホットエリア」の除染が非常に重要になると言えます。
●「コールドエリア」を目指して
この実験の意図は明確。コンクリートブロックを使って放射線遮蔽壁を作り、生活環境の線量を下げることができないか、というものです。
飯舘村の75%は山林。汚染された山林から放射されるガンマ線が生活圏に影響を与えています。ということは、生活圏から山林を見通す角度に遮蔽壁を作れば線量を下げることができるはずです。
あらかじめ川俣町のお店に注文してあったコンクリートブロック72個を運び、宗夫さん宅の庭の一角に積み上げます。すでに第一次の実験は行っており、その際にはコンクリートブロックを一重にして30cm四方程度の空間を作りました。このときは外で2.2μSv/h程度だった線量が、内側では0.6~0.9μSv/hにまで低減できることを確認しました(レポート「ブロック遮蔽壁の効果1」 PDF201KB)。
今回は、壁を二重にしてさらに線量の低減を図ろうとしています。
ところが、今回も0.6μSv/hぐらいから下がらない。これはどうも中に詰めている川砂に問題があるのではないかということになってきて、調べてみたところ砂が汚染されていることを確認できました。
宗夫さん宅の前を流れる川の水はセシウムを検出できないくらいきれいなのですが、その底にたまっている川砂にはセシウムがついている、ということ。これも新しい発見ではあります。防護壁実験は次回へ繰り越しとなりました。
●プロジェクト目白押し
今回は、プロジェクトが目白押しです。
●農機メーカーの協力
田車除染は手押しの田車から出発しましたが、手押し田車では広い田んぼを撹拌するのはキツい。実用化のためには、やはり機械化が必須です。
田車の農機としての機能は、もともとは田んぼの除草。このため、稲が植えられている畝をさけてかき回すように隙間が開けられています。しかし除染用に使う場合は、この隙間は不要。むしろ隙間なくかき混ぜられることが求められます。その他にも、もともとの目的とは違う使い方をするわけで、何らかの改造が必要になることも考えられます。
そこで、エンジン付きの田車(除草機)や代掻き機を作っているメーカー何社かに除染用に改造していただけないか打診したところ、応じていただけるメーカーがありました。
今回、さっそく改造版を持ってきていただいた会社が2社。いずれも東北地方の会社です。やはり他人事ではないという感覚があるのだと思います。
今回来ていただいたのは、山形県酒田市にある(株)美善と福島市のやまびこ東北(株)福島営業所。美善の専務さんはわざわざ酒田市からトラックに積んできていただきました。
実は美善は、われわれがいつもたいへんお世話になっている「アナクール」のメーカーでもあります(現在は生産中止)。
美善の田車は「あめんぼう号」。今回は、こちらを前田の伊藤さんの田んぼに投入してテストしました。
またやまびこ東北の自動乗用田車は、文字通り機械の上に乗って運転しながら撹拌していくタイプです。こちらは、佐須の宗夫さんの田んぼの実験に投入されました。
それぞれビデオがありますので、ご覧ください。
●機械式田車による除染(前田)
●田車除染の手順(佐須)
●3次元線量測定
前回の報告にも書きましたが、いぐね(屋敷林)や山林が農地へ突き出した部分のスギやヒノキの葉の汚染が激しく、居住環境に影響を与えている可能性が大きいことがわかってきました。
実際にどの林のどの部分にセシウムが付いているかを知るためには、そこに近づいて放射線を測るのが早い。そのためには放射線モニターを空中に上げて測定することが必要です。
3月17日-18日の報告で風船でGPSモニターを飛ばす実験をしたのも、そのためです。GPSで高度も測定できますので、3次元の放射線マップを作ることができます。このときの予備実験によって、やはり屋敷の背後にある山林から放射線の影響を受けているようだということが確認できました。
今回は、これをもう少し高精度かつ簡単にできないかという試験。
1つ目の方法は、伸縮ポールの上に測定器を付けるというもので、もう1つはラジコンヘリコプターで測定器を飛ばすという方法です。
伸縮ポールは長さ7.6mの三脚付で、これを使って、宗夫さん宅の庭の6点×高度8点(1mごと)で測定。最初は、無線式Webカメラを付けて線量表示を手で記録するという方法をとりましたが、早々にWebカメラ機材(iPhone+MacBook)のバッテリーがあがってしまい断念。GPSモニターだけで測定しましたが、GPSの高度の精度が1mきざみに対応せず、高度と線量の関係を確認できるデータが取れませんでした。
バッテリーの強化あるいはGPSよりも精度高く高度を記録できる装置の導入が必要です。
一方、ラジコンヘリコプターはGPSモニターを搭載しても十分に浮上できることを確認。ただし、線量測定できるだけの安定飛行をするためには、操縦者の技能向上と、ヘリコプター側の調整が必要だということがわかりました。
●木登りロボットの試験
汚染されたいぐねや山林をどうやって除染するか。伐採するというのが一般的に考えられている方法ですが、実は強く汚染されているのは葉であって、葉のついている枝を切り落とせば、かなり線量を下げられるのではないかという見通しがあります。
いぐねの立派な木を伐採するのは忍びないというだけでなく、除染廃棄物を減らすという意味でも、枝打ちだけで線量を下げられないかという実験には価値があります。
もちろん人間が登って枝を打つこともできますが、省力化と同時に無用な被ばくを避けるという意味で、木登りロボットを使って枝打ちしてみてはどうか。今回は、その試験です。
木登りロボットは、木の周りにセッティングして、あとはリモコンで操作。下方に取り付けた4つのタイヤが回転しながら、上下に移動します。
先端に回転するノコギリ刃がついており、登っている間は刃を木から離した状態、切るべき枝の手前で作業ボタンを押すと、ノコギリが木に密着、回転を始めて枝を切り落とします。
うまく行くと、すぱっと枝が落ちて気持ちが良いのですが、ときどき引っかかって、動かなくなることがあります。その場合は、棒などで押してやります。
この日の実験は、宗夫さんの牧舎前のヒノキでやってみました。細い枝が一本づつお行儀よく出ている木なら、スムーズに切り落とせますが、同じ場所から何本も枝が出たり、太い枝に出会うとうまく切れません。
また、切る枝が大きいものだと、切断中に枝が自重でたわみ、ノコギリ歯が切り口に挟み込まれてしまう枝噛みという問題が起こって、動作不能になるようです。
ネットで調べたら、引っ掛かって動かなくなる場合は、6mの脱出棒で引っ張るという情報もあったので、これはよくある現象のようです。
●「コールドエリア」を目指して[続]
前回の報告にあるように、コンクリートブロックに詰めた川砂が汚染されていたために十分に線量が下げられなかった遮蔽壁試験ですが、今回は市販の砂を使って再挑戦。
前回と同様に72個のコンクリートブロックを積み上げ、外部からの放射線を遮蔽し、線量の低い「コールドエリア」を作るのが目標です。
今回はめでたく約0.2μSv/hを実現。詳しくはレポート(PDF)をご覧ください。
遮蔽壁による放射線遮蔽(コールドエリア)実験(PDF 290KB)
●比曽地区ユンボによる表土剥ぎ取りと田車除染の結果
5月12日に比曽地区の菅野啓一さんの田んぼで行った、ユンボによる表土剥ぎ取りと田車による除染の結果が出ました。
予想通りユンボ(神ワザ)による剥ぎ取りの圧勝!
セシウムの高濃度層は完全に剥ぎ取られていました。
ユンボによる剥ぎ取りは機材と技能を要する方法ですが、正しい方法で行えば劇的にセシウムを除去できます。
田車による除染の方は、泥の掃出しが不足していたと思われます。